Takahiro
2008年に大手Slerに入社。入社から16年間、中小~大企業の製造業のお客様を担当。お客様に対して、CAD・PDMなど含めたDR工程~下流工程まで改善の提案をし、「モノ売りではなく、コト売り」の観点で各部門の課題解決に対応。2023年、FRONTEOに入社。ビジネスインテリジェンス事業本部の部長として、お客様の課題の解決支援を行っている
新しいこと、刺激的な環境を
求める人に向いている。
社歴に関わらず“挑戦”できる職場
日本の製造業が抱える課題を、新しいソリューションで解決したい
Takahiroさんが開発に関わった「匠KIBIT零(タクミキビットゼロ)」は、製造業の課題を解決するソリューションと聞いています。いま日本の製造業は、どんな課題に直面しているのでしょうか?
製造業の現場は、「技能」と「技術」に関して大きな課題を抱えています。技能と技術、同じように聞こえますが、実は似て非なるものです。
一つ目の「技能」は、熟練工の方々が長年の経験で培ってきた勘やコツのような、言葉で表現することが難しいたぐいのものです。例えば、製品やパーツひとつをとっても、肉厚を0.01mm薄くするかしないかによって、数千万円単位のコスト差が生じることもあります。この判断は長年培われた技能に基づいていて、細かな部分での工夫が日本の製造業の強みに繋がっています。こういった熟練工の技能がきちんと継承されないのは、深刻な問題だと考えています。
もう一つの課題は、文書やマニュアルとして残されている「技術」が活用しきれていない点。過去の知見やノウハウなど、製造現場には膨大な記録が残されていて、歴史のある企業だと、何十年分もの設計図面や不具合対応の記録、改善事例など貴重なデータがあります。ただ、これらの多くは紙の資料だったり、単純なテキストデータだったりして、必要な情報を効率的に見つけ出すのが困難で、活用しきれていません。
自社のデータサイエンティストと
自社開発のAI「KIBIT」で、最適なモデルを構築
課題に対して「匠KIBIT零」はどのようなアプローチで解決するのでしょうか?
「匠KIBIT零」の開発にあたって、まず競合の製品調査を100社近く行いました。そして、お客様のニーズを確認するべく、数十社へのヒアリングや初期提案を行いました。その中で見えてきたのは、技能にしろ、技術にしろ、生成AIを搭載しているナレッジシェアのシステムでは、製造業・建設業の現場の課題に応えられない、ということでした。
例えば、プラント関係のお客様では、過去の膨大なデータの保全記録があったりします。機械の不具合が起きた時、過去に似たような事例があったかどうかを調べたいのですが、記録者によって用語や表現が異なるため、キーワード検索では必要な情報にたどり着けないことが多かったんです。
「匠KIBIT零」は、このような課題に対して、テキストの意味やニュアンスを理解して検索できる独自のAI技術を採用しています。「運転する」「操作する」「稼働させる」といった、表現は違えど意味の近い言葉でも関連付けて検索できるのです。また、コンテキスト(文脈)も含めて解析ができるため、より正確な情報の抽出が可能になっています。
そしてこの技術は、インターネット接続なしに利用できるのもポイントです。製造現場や、建設業など多数の業種では、セキュリティの観点からクラウドサービスが使えないケースが多いのですが、「匠KIBIT零」ならオンプレミス環境でも高度なAI機能を提供できます。
データ処理の面でも特徴的な技術を持っています。例えば、PDFからテキストを抽出する技術や、非構造化データを整理・分類する他社でもマネができない技術です。これにより、過去の紙資料のデジタル化と活用が可能になります。
さらに、当社のデータサイエンティストチームと協力して、お客様のデータに合わせた最適なモデルを構築できます。例えば、特定の業界や工程に特化した専門用語の理解や、お客様固有の表現への対応なども行っています。
社員一人一人の専門性が高く
誰もが新しいことにチャレンジできる
AIによって、具体的にどのような課題解決が期待できるのでしょうか?
熟練工の方々の経験や勘を、ある程度データ化することで、蓄積や共有ができるようになります。それにより、たとえば若手社員が過去のベテラン作業者によるトラブル対応を検索し、活用することもできるようになります。
過去の類似事例など、データを有効活用できるので、業務効率の向上も図れます。これは、蓄積された「技術」の活用です。類似事例を素早く見つけ出せれば、トラブルへの対応時間も短縮でき、より適切な解決策の選択が可能になります。
例えば、予防保全の質の向上も期待できます。過去のトラブル事例やメンテナンス記録を分析すれば、故障の予兆を早期に発見したり、最適な保守計画を立案することも可能です。保全活動が円滑に行えるようになるでしょう。
とはいえ、AIはあくまでも人の判断を支援する道具です。製造業の現場で培われてきた技能や経験を完全にデジタル化することは難しいですし、そうする必要もありません。むしろ、人とAIがそれぞれの強みを活かしながら、より良いものづくりを実現していく。それが私たちの目指す未来像です。
そして「匠KIBIT零」がその架け橋になればいいな、と思っています。製造業の課題を深く理解し、現場の方々と一緒になって解決策を考え、実装していく。それを積み重ねていくことで、日本のものづくりの競争力向上に貢献していきたいと思います。
TakahiroさんのFRONTEOに対する印象、自身の働き方について教えてください
私はSlerに16年間勤めており、製造業のお客様を中心に営業活動を行っていました。製品の企画から製造までの過程で、いかに細かい工夫や改善が重ねられているかを目の当たりにし、日本のものづくりの奥深さを実感しました。
FRONTEOに転職して印象的だったのは、社員一人一人の専門性の高さと、新しいことにチャレンジできる環境です。入社して間もない私が「匠KIBIT零」の開発プロジェクトに関れたのも、前職ではありえません。最初は不安もありましたが、市場調査から製品企画まで携わる中で、自分の製造業での経験を活かせる場面が多くあり、どんどん楽しくなりました。
また、働き方にも大きな変化がありました。前職では残業がかなり多く、プライベートの時間がなかなかとれませんでした。今は適切な休暇を取りながら、より創造的な仕事ができます。毎日新しい課題に向き合いながら、自分自身も成長を実感できる、そんな環境で働けることにやりがいを感じています。
前職は、大規模な会社でしたが、これほど日々、面白い知識や経験を持つ人との出会いはありませんでした。FRONTEOでは毎日新しいことがあって、刺激的です。さまざまな業界の風習を知ることができ、そういった知識も営業活動に活きていますね。
Text:Yoko Koizumi/Photo:Shintaro Yoshimatsu