Daisuke
株式会社ニデック(眼科医療機器メーカー)にて医療機器プログラムに関する開発部門に累積8年、営業部門に4年、上流工程を中心に活動。2022年にFRONTEO入社。医療器開発のチームリーダとして、医療機器製造業の責任技術者として設計開発、品質管理を行っている
単なるソフトウェアの開発ではない。
医療とAIの融合で革新をもたらして、
人々の健康に貢献することが目標
世の中の役に立つ、意義のある製品を開発したかった
FRONTEOに入社されたきっかけを教えてください
前職でも医療機器のソフトウェア開発を行っていたのですが、もう一つか二つ、世の中の役に立つ製品を開発したいという思いがありました。そんななか、「どうやらFRONTEOが認知症診断支援という面白いことをやっている」という情報に行きつきました。開発時期としても、ちょうど「0」を「1」にするタイミングで、開発早期から関われるため入社を決めました。
認知症は日本人がもっともなりたくない疾病のひとつですし、この予防と対策は社会的にも大きな課題となっている。「自分も何か貢献できるのではないか」と思ったんです。
私たちが開発しているソフトウェアは、医療機器として認可を目指しています。このシステムでは当社が持つAIエンジン「KIBIT(キビット)」を活用して、問診の際の患者さんとの会話から認知症の可能性を探るというソリューションです。診断を下すのではなく、あくまでも医師の診断支援ツールとして機能することを目指しています。
認知症の早期発見・早期治療に役立ててもらいたい
医療機器としての認可取得は、大変な過程だと聞きますが、具体的にはどのような点に苦労されていますか?
医療機器のソフトウェア開発でもっとも大切なことは実はプログラムではなくて、製品を開発していく過程をすべて記録した文書を作ることです。
どんな計画で、どんなものを、どのように作るのか、といった一連のプロセスを余すところなく記録する必要があります。
問題発生を未然に防ぐためにも、どういう計画で、どのようなプロセスで作ってきたのか、また何かあっても、事後の分析や検証、またエビデンスを証明するためにも、緻密に、漏れなく、情報が積み上げられた設計文書、記録が必要になってくるわけです。
ほかにも厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)との折衝があり、また薬事承認が取れた場合、診療報酬における点数を決めてもらわなくてはいけません。
医療機器は国の認可なしには世に出すことはできない、そんな厳しい規範のなかでモノを作るからこそ世の中の役に立つわけです。これが医療機器開発の醍醐味といえるでしょう。
今後の展望についてお聞かせください
このソフトウェアは、専門医ではない医療機関での活用が期待できる点が特徴です。
認知症の症状は、ほかの疾病と似ている症状も多く、専門医でなければ認知症か否か診断は非常に難しいとされています。
いまはアルツハイマー型認知症の新薬として、エーザイとバイオジェンが共同開発した「レカネマブ」やイーライ・リリーの「ドナネマブ」が承認されています。ただし、これらが適用されるのは早期の段階。せっかくのいい薬が使えるのだから、早い段階で患者さんを見つけて、治療に役立ててもらいたい。 大切なのは、MCI(軽度認知障害)などのいわゆる認知症予備軍の方々を早めに見つけ出すこと。2030年には認知症の患者数が523万人、MCIの患者数も593万人になると推計されています。多くの患者さんが最初に訪れる医療機関である、内科や外科、耳鼻科などのかかりつけ医にわれわれのソフトウェアを導入していただき、早期発見に役立ててもらいたいと考えています。
医療の現場に革新をもたらす、製品を通してできる社会貢献
認知症以外の分野への展開も考えていらっしゃるのでしょうか?
今後はうつ病、ADHD、統合失調症の診断をサポートするソフトウェアの開発も進めていく予定です。これらの開発を通じて、精神疾患の診断・治療に新たな道筋をつけられればと考えています。
簡単な道ではありませんし、完成まで5年、いや10年を要することになろうとは思います。しかし、認知症の診断支援プログラムと同様に、これらソフトウェアが完成すれば、広く世の中で活用されることになることは間違いありません。 製品を通してできる社会貢献であり、モチベーションを保てるのではないかと思います。
最後に、FRONTEOで働きたいと考えている方々に向けて、メッセージをお願いします
FRONTEOは、技術の力で医療に革新をもたらし、多くの人々の健康に貢献したいと考えています。私たちの仕事は、単にソフトウェアを作るだけではありません。医療の現場に革新をもたらし、多くの人々の健康に貢献することが目標です。
薬事について詳しい方や、医療機器の開発に携わったことがある方であれば、仕事の内容もイメージしやすいと思いますし、また新たなソフトウェア開発を担う可能性もあります。
医療とAIの融合は、これからの社会でさらに重要になってくるでしょう。それは、現在開発中のソフトウェアのように、認知症のような診断の難しい疾患に対して、AIが新たなアプローチを提供できることでも証明されています。
新しいモノを創出したいと考えているなら、いまこそ「0」を「1」にするタイミングです。
Text:Yoko Koizumi/Photo:Shintaro Yoshimatsu