平岩 巧 行動情報科学研究所研究開発チーム 博士(理学)
2019年2月19日
國枝 宏美 経理財務統括部 統括部長
2021年11月19日
平岩 巧 行動情報科学研究所研究開発チーム 博士(理学)
2019年2月19日
國枝 宏美 経理財務統括部 統括部長
2021年11月19日


豊柴 博義

執行役員/ニューロ言語科学研究所長 兼 行動情報科学研究所長 CTO 博士(理学)


自然言語処理へのチャレンジ

FRONTEOに入社する前は、ある国内の製薬企業に勤めていました。2016年ごろ、FRONTEOがライフサイエンスAI分野にも展開し始めた頃ですが、前職の会社とFRONTEOに共通する方から、「FRONTEOがライフサイエンスのドメイン知識がある研究者を探している」とお声がけいただいたことで、FRONTEOという会社を知りました。また同じ頃、自然言語の解析が研究テーマとなったことで、自然言語処理にとても興味を持ち始めたタイミングだったのですが、その当時FRONTEOはすでにリーガル分野でAI、自然言語処理を使ってビジネスを行っていました。2016年ごろは、まだまだAIで何かをやろうという段階の会社がほとんどで、事業化されたという話は聞いたことがなかったので、そんな凄い会社があるのかとびっくりしたのを覚えています。自分のこれまでの知識を生かしながら、自然言語処理にチャレンジできるということでFRONTEOへの入社を決意しました。


新しいAIアルゴリズムを開発

当時FRONTEOでは2種類のAIアルゴリズムが開発され、それをベースにビジネスが展開されていました。一方、ライフサイエンスやヘルスケア分野では、エビデンスベースという考えが基本です。これはそれまでのFRONTEOのアルゴリズムが得意とする、ある特定の人の暗黙知を学習し、それを再現するのとは異なり、誰か一人の経験だけを根拠に判断を行うのではなく、例えばこれまでの成果である研究論文などの蓄積された多くの知見を根拠に判断するという発想です。この特性を踏まえた解析に適したものとして、新たなAIアルゴリズムを開発しました。それを最初に搭載したのが、私の入社時にすでに研究開発が始まっていた転倒転落予測AIシステム「Coroban」です。Corobanの開発に成功したことが、ライフサイエンスAI事業のその後の成長につながっていきます。


論文検索業務の効率化追究が契機となった医学論文探索AIシステム「KIBIT Amanogawa

前職からの課題のひとつが論文検索でした。これは、研究者の業務の中でも非常に時間を取られる作業です。どうしたら論文検索を効率化できるのか、この思いは私が自然言語処理に興味を持った要因のひとつでもありました。そして、前述のAIアルゴリズムを使えば新しい論文検索ツールが作れるのではないか、という考えから生まれたのが「KIBIT Amanogawa」です。

KIBIT Amanogawa」は、従来のキーワードとは違った検索が可能です。従来、論文データベースをキーワードなどで検索する際、その結果はリストとして表示されていましたが、そのリストのどこまで読めばよいのか、研究の観点からはリストの下位にある論文にも目を通すべきなのではないか、といった疑問があり、リストとは違う形での検索結果表示が必要だと感じていました。こうした思いから生まれたのが、KIBIT Amanogawaのグラフィカルな検索結果の表示です。キーワード検索だけでは見つけられなかった論文も含め、結果をマップ状に表示することで、論文情報を網羅的かつ視覚的に把握することができます。


可視化へのこだわり

KIBIT Amanogawaの検索結果画面が象徴的ですが、特にこだわっているのが「可視化」です。人間は情報の8割を目に見える部分から得ていると言われ、視覚情報として何を提供できるのかが重要です。我々は主に文書を解析対象としていますが、文書だとどうしても読んで理解することが根本にあります。それをいかに直感的に見て理解につなげるものにできるかが、開発側の取り組みとして面白さを感じるとともに、多くの方にも関心をお持ちいただいているのではないでしょうか。新しい認識の仕方、新しい理解の仕方を提供していきたいですね。


ニューロ言語科学研究所

ここ数年、「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の研究開発を進めています。その過程で、とても興味深いレポートを読みました。ある修道院で700人弱の修道女が長年にわたって日記を書いていたのですが、それらの修道女の中で認知症を発症した方の日記を分析した結果、発症と60年前に書いた日記とに関連性があったというのです。つまり、一般に認知症によって言葉遣いが変わることが知られていますが、実はそれよりはるか以前から、例えば言葉の使い方や選び方と認知症の発症に、何らかの関連があるのではないかと感じ、それを明らかにするには自然言語処理による解析だけでは足りない、人間の脳の働きも見るべきだという思いに至りました。

ニューロサイエンスの分野から言語そのものを扱う人間を見てみると、精神疾患の方の言葉遣いの変化や、もともとの言語の認識に違いがあるのかといったことを、もっと深く理解できるでしょう。そのためには言語以外のデータに対しても、イメージングなどさまざまなツールによる解析が必要かもしれません。コンピュータに向かう部分と、人間の言語の認識、言語自体が人間に与える影響などを深く掘り下げるために、ニューロ言語科学研究所を立ち上げました。これは色々な分野の人間が集まって進めるテーマだと思います。人間の認識や理解に興味がある方なら、AIや自然言語処理といったことにとらわれず、研究開発に取り組むことができるでしょう。ぜひ人間の深いところに一緒に迫ってみませんか。